小市民ダークロのありがちで気の抜けた感じのやつ

短文集その6


車内行事
モヒョヒョーヒョ!ブリッブリッ。・・・・・・失礼しました。駆けこみ乗車はおやめください。駆けこみ乗車はおやめください。ドアが閉まりません。ドアが閉まりません。咳きこみ乗車もおやめください。咳きこみ乗車もおやめください。風邪が治りません。風邪が治りません。乗り降り続けてお願いします。はい、乗って、降りて。乗って、降りて。乗り降りを続けてください。ドアがはまります。はまるドアにご注意ください。ご利用いただきまして、ありがとうございます。ご利用いただけなかった人にも感謝しております。優先席付近では、携帯電話をお使いしないでください。それ以外ではマナーモードに切り替え、通話はご遠慮ください。会話もご遠慮ください。息をしないでください。できることなら死んでください。乗り降りする時だけ生き返ってください。車内での喫煙はおやめください。おタバコは喫煙車両でお吸いください。喫煙車両なんか、はじめからないですけど。えー。話している間に3駅ほど通過してしまいました。今までに通過した駅は、高田馬場、目白、池袋でございます。残念でした。そして、今、通過中の駅は大塚です。次の駅は大塚でした。次の駅は大塚でした。えー、電車、大変混みまして、お客さまにはご迷惑おかけいたします。私の席は大変見晴らしもよく、快適です。えー。皆様。右をごらんください。右に見えますのは、家でございます。左に見えますのも、家。どこを向いても家。また家。家。家。イエイエイエイエイエイエイエイエイエイエ・・・。イエェェーイ!ゴオオオオオオオオオオオオォォォォォル!・・・・・・失礼いたしました。取り乱してしまいました。シュッシュッポッポ、シュッシュッポッポ、ポッポー!お気をつけください。お客様は家に帰れず、私が童心に帰りました。なんだか気分がよくなったのでお客様を海にでもお連れしようと思うのですが、あいにくこの電車は海にまで線路がのびておらず、環状線のためグルグル回りつづけるだけです。一体なにが楽しいんですか?こんな電車、さっさと降りたほうが身のためです。ご注意ください。私の中の線路は、今、海に向かっています。オーライ。安心してください。ゆくゆくは東京中を線路で埋めつくしてみせます。見ていてください。必ずそういう日が来ます。えー。この先、電車、揺れますのでご注意ください。・・・・・・電車、揺れまして、大変失礼いたしました。最近、線路の上に石を置くいたずらが多発しておりまして、たった今も石を発見したのでジャンプしてよけました。お客様には浮遊感を楽しんでいただけたのではないかと思います。はい。また揺れますのでご注意ください。今から着地します・・・・・・。えー。間もなく電車がホームにまいります。危険ですので、白線の内側まで下がってお並びください。中の人に言っても、しょうがないですね。ははは。本日、私の中に雨が降っているため、傘などの忘れ物が大変多くなっております。お忘れ物に十分ご注意ください。私のことも、忘れないでください。電車、そうとう前から駅についております。中央線、東西線、耳栓、えびせん、扁桃腺はお乗り換えです。本日の運行が終了いたしました。まもなくホームの電灯を消します。ヘイ!後ろ!オーライ!・・・お待たせいたしました。天国方面地獄経由、ゆりかご駅発墓場行き、最終電車、まもなく発車です。
「そのココア、甘いですか?」
「そんなに甘くないですよ」
「現実みたいですね」
「現実を飲んでる感じですね」
杉浦:あれ?昨日見た映画の話をしようと思ったんだけど、題名が出てこない
私:よくあるよ。題名って覚えにくいよな
杉浦:あれ?役者の名前も思い出せない
私:役者の名前のほうが、題名よりも覚えにくいよ
杉浦:あれ?映画の場面も思い出せない
私:・・・ほんとに見たのかよ
杉浦:『8マイル』を借りようと思ったんだけど、やっぱり借りるのをやめて棚に返したのは覚えているんだけど。
私:借りてない映画のほうが印象深いのかよ!
最近のホームページやネットゲームで、現実世界のことを「リアル」と呼んでいる書き込みを見かける。「最近リアルで忙しいから」、「リアルの友だちがいない」というような使われ方をよく見かける。最近までは、できのいいプラモデル、人形などを「リアル」と呼ぶ使い方をしていた。おいしそうなイチゴの作り物に対して「リアルなイチゴだね」というように使っていた。現実ではないけど、まるで「本物のようだ」という意味で使われていた。最近のネット社会で使われている「リアル」は少し意味合いが違うような気がする。彼らはネット社会の外の世界を本物ではないイチゴとして見ているのかもしれない。ネット社会以外の社会を無意識に本物ではないと感じているのかもしれない。
友人のホムペより
ダークロにパラノイアだとか分裂だとか言われた。変人に言われると本当にぼくも変人のような気がする。「寅さんは具合が悪いのか?」昨日ダークロと話していた。昨日放映していた寅さんと前作「ぼくの伯父さん」を見ると寅さんはそうとう具合が悪そうだ。松竹は寅さんを酷使しすぎだ。あれじゃあ、渥美清死んじゃうよ。
店で飲んでいる最中に、私の彼女がブランド物のバッグを置き引きされた。同席していた友人が悲しむ彼女にかけた慰めの言葉。「おめでとう。初めてあなたは他者と接したのよ」
オースター読む
今日、オースターの「幽霊たち」を読んだ。何も起こらない小説。ブラックを見張り続けるブルーの物語だ。110ページでまとまっているので、読みやすい。もう数えられないくらい読んだ。今回読んで気づいたことは、ブラックの年齢が20代後半〜30代だったことだ。作家同様、登場人物も若かったのだろう。先日、「ブックオブイリュージョン」を読んだ。2002年に出版された近作。なかなか翻訳されないし、最近はオースターではなく柴田の作品になってしまっているような気がした(金子君も同じようなことを言っていたような気がする)ので原書で読んでみた。オースターの文章は、繰り返しが多くて、かなり読みやすい。私のような初心者向きだ。たとえ1語、1文を読めなくても、次の1語、1文でオースターは同じことを言っている。繰り返しの美学を感じた。映画の描写があったが、映画監督の経験があまり活きていないような気がした。映画技法はもうちょっと奥深い。監督の幻の作品を1作しか描かなかったのは賢明だった気がする。映像よりも物語重視の作家なのだろう。映画を描写するためには、何かを起こさないといけない。そこに無理がある。何も起こらない時の描写のほうが、この作家は抜群にすごい。話の内容は「幽霊たち」と、テーマが同じだ。「幽霊たち」でもロバートミッチャムの映画が出てきたし。「ブック〜」では限りなく幽霊に近い人物を二人置いて、細かく作りこんでいる。まあ、これは最高傑作とはいえないと思う。やはり「幽霊たち」が最高ではないだろうか。いつも思うことだが、アメリカ文学らしからぬ香りがする。ディズニーランドが好きな人には薦められない文章だ。個人の体験を重視するフランス向きの作家のような気がする。フランスではディズニーランドも流行ってないし。オースターはフランスの翻訳もしていたし、4年間フランスで生活もしていた。この感触はヴァレリーに近い。なかでも「テスト氏」に似ている。「テスト氏」に近いのはカルヴィーノの「パロマー」だ。カルヴィーノの「冬の夜一人の旅人が」では、「幽霊たち」に似ている部分が見られる。「安楽椅子の女性を眺めながら私は≪真実によって≫書く必要を感じていた、つまり彼女をではなく彼女の読んでいることを、なんでもいいが、しかしそれが彼女の読書を経なければならないと考えながら書く必要を」(「冬の夜一人の旅人が」ちくま文庫 脇功・訳より) 逆のパターンの読者と作者の関係が見受けられる。「物語の構想。ふたりの作家が、谷を隔てて反対側の斜面にあるふたつの山荘に住んでいて、たがいに覗きあっている」(前掲) これなどはお互いが読者であり作者である関係だ。オースターは「ブック〜」において、作家と映画監督という2人の作家を置いて多面的な物語を展開させた。批評的で自覚的。オースターは現代的な作家だ。
虫の観察
「これが例の虫かい?へえ。かわいね。流行ってるんだろ?色がきれいだ」
「それは餌だよ」
「え?じゃあ本物はどこにいるの?」
「あ、本当だ。あれ、逃げたのかな?」
「餌に食べられたのかな」
「あ、ゴソゴソ音がする。いるよ。この中に」
「どこだよ」
「保護色だよ。ほら、ガラスの色になってる」
「あ、出てきた。・・・・・・へえ、グロいね」
「ああ。グロいよ」
「でも、食べたらうまいんだろ?」
「おれもそう思って、さっき食べてみた。だけど口に入れたとたんに生き返って、口の中を暴れだしたんで、急いで吐き出したよ。おれの2つの鼻の穴から、足が飛び出て黄色い液が出た」
「気持ち悪いな」
「まだ鼻の穴から虫の足が飛び出てるよ、ほら」
「どれどれ・・・鼻毛だよ、それ」
「この虫がなんで人気があるか知ってる?」
「グロいから?」
「ちがうよ。ほら、DNAが一つだけ虫から飛び出てて、近くに漂ってる」
「あ、この二重らせんのやつ?」
「そう。交尾する時が一番面白いらしいよ。あとね、この虫、日本語がしゃべれる」
「え?しゃべれるの?」
「いいか、見てろよ。おーい、虫くん!元気?」
「ウルセー!オレハ、イマ、ムシノイドコロガワルインダ」
「虫くん!好きな色は?」
「ウンチイロ!」
「ウンチ色って、そんな色はないよ」
「・・・おい、それ、腹話術だろ?」
「おーい虫くん!」
「だからそれ、腹話術だろ?」
「チガウヨ!」
「虫の声色を使うなよ。あ、壁をよじのぼってきた!」
「わぁ!」
「・・・おい!大丈夫か!かまれたみたいだけど。しっかりしろ!」
「ぶーんぶーん」
「おい、どこから声出してるんだよ。おい!あんまり飛びはねるなよ!あ、壁にへばりついた」
「つくつくつく・・・オーシーツクツクツク。オーシーツクツクツク。・・・りーんりーんりーんりーん。・・・ミーンミンミンミーン・・・」
「おい!おまえ、虫になっちゃったの?」
「こっけこっこー!」
「その鳴き声は虫じゃないだろ!」
「むず。むずむずむず!」
「なんだか様子が変だぞ・・・うわ!皮が破れた!」
「メリ!メリ!」
「そうか、さっきまでサナギだったから、成虫になるんだな?」
「メリメリメリ!オギャーオギャー!オギャーオギャー!」
「あれ、赤ちゃんになっちゃった!」
「メリ!メリ!」
「あれ!また脱皮するのか」
「メリメリメリ!オー!ジャパニーズカーペット!タタミ!タタミ!フジヤマ!ハラキリ!」
「なんだか変な日本通のアメリカ人になったぞ」
「メリメリメリ!ごろごろごろ・・・」
「うわ!ボールになっちゃった!生き物ですらないよ!」
「メリメリメリ!ぶるんぶるんぶるん!ブーン!」
「わ、飛行機になった!」
「メリメリメリ!ゴギョギョギョ。バササ!バサ!バサササ!ギュンギュン!ビョビョビョビョ!」
「羽が生えてるぞ!角とかしっぽも生えてる!うわ、怪物だ!」
「ウシャシャ!ブリブリブリ!ギョギョギョ!ガッシュ!ガッシュ!」
「来るなぁ〜!ギャア!助けて〜!」
「メリメリメリ!あれ?・・・ここはどこだ?」
「あれ?元の形に戻った!」
「あ、そうか。おれ、虫に食われたんだ!あれからどうなっちゃったの?」
「おお、助かったのか!おまえ、大変だったよ。形が変わっちゃって」
「そうなの?全然記憶にないよ。ああ、疲れた・・・・・・」
「よかったよかった。どうなっちゃうかと思ったよ」
「ふう。腹へったな・・・・・・」
「・・・おい。そんなにジロジロ見るなよ」
「・・・おまえ・・・食ってもいい?」
超能力デカ
A:ああ・・・ぐちゃぐちゃだよ。夢に出てきたケチャップまみれのスパゲッティはこれだったのか・・・
B:めったざしにされてる。君はどこの署のものだね
A:私は超能力刑事です。今日はあいにく寝坊いたしまして・・・
B:おお、君が超能力刑事か。噂は聞いてるよ。寝坊したとしても時間どおりだ、気にすることはないよ。
A:いえ、いつも起きてる時は予知能力が働いて、事件が起こる前から現場に張っているので、私の管轄ではここ何年も事件が起こらないんですよ。
B:え?じゃあ、始まる前から事件を解決してるの?
A:ええ。
B:でも、三日前にもこの管轄で、殺人事件があったじゃないか
A:ええ、でも私が逮捕しました。ちゃんと殺されるのを待ってから。
B:事件がおこってるよ!それじゃ、まずいじゃないか!
A:私は罪を償うべきでしょうか。これって殺人になるんですかねえ?
B:もう何だか分からないから、こうなったら仕事で償ってくれたまえ。どうだ、超能力刑事、この現場を見て、何か分からないか。
A:はい、・・・犯行時刻の現場を透視します・・・
B:そんな事ができるのか!
A:・・・倒れた被害者を男が見下ろしてるのが見えます
B:そいつが犯人だ!もっと詳しく見てくれ
A:男は中肉中背のメガネの男、妻は順子、息子は博。18になる娘の久代は、最近ドライブに行ったきり朝まで帰らないのでちょっぴり心配だ。最近風俗に行った後、尿の出が悪いので、病気になったのではないかと心配している・・・
B:それはおれだよ!何でそこまで分かるんだ!
A:すいません、花粉症で・・・
B:関係ないだろ!
A:みんなが失敗をごまかすのによく使うから・・・ぐすん
B:ちゃんと捜査をしろ!
A:はい、では時間移動して現場に直行します!でや!
B:おお!消えた!
A:うわー真っ暗だ。あっちの方から女性が歩いてくるぞ
B:おお、声だけ聞こえる
A:おや、後ろから、怪しい人影が近づいてくるぞ!
B:そいつだ、超能力刑事!そいつが犯人だ!
A:おおーっと!マラソンランナーだ!あいつが犯人だな、超能力ビームだ、びびびびび!うわ!ランナーにぶつかってビームがそれた!きゃあああ!悲鳴が聞こえたあ!ドカーン!
B:・・・。
A:行って来ました。怪しい人物はどこにもいませんでした
B:お前が犯人だよ!