映画評

映画評


ダークロHP 映画評 ページ1
最近見たのはDr.パルナサスの鏡 ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 告白 インセプション バッド・ルーテナント ジュリエットからの手紙 天使突抜六丁目 恋とニュースのつくり方 英国王のスピーチ ヤンヤン 夏の想い出 パレルモシューティング ヤーチャイカ 幕末太陽傳です
1ページ 愛の流刑地  アイ・ロボット  アダムス・ファミリー2  あなたにも書ける恋愛小説  アフタースクール  いかレスラー  インセプション  ウォーターボーイズ  姑獲鳥の夏  海辺のレストラン  AI   映画は映画だ  英国王給仕人に乾杯!  英国王のスピーチ  おいしい生活 
2ページ オーシャンズ11  オースティン・パワーズ ゴールドメンバー  オー・ブラザー!  オープン・ユア・アイズ  おくりびと  男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎  過去のない男  勝手にしやがれ  亀は意外と速く泳ぐ  カラー・オブ・ライフ  ガンモ  キサラギ 
3ページ キッチン・ストーリー  ギャラクシー★クエスト   キューブ2  グッバイ、レーニン!  クラークス  CLUBファンタンゴ  恋とニュースのつくり方  恋人たちの予感  ゴーストワールド  告白  サンダーパンツ!  JSA 
4ページ シカゴ  シャドウ・オブ・ヴァンパイア  ジュリエットからの手紙  少林サッカー  図鑑に載ってない虫  スキャンダル  スクール・オブ・ロック  スコルピオンの恋まじない  スズメバチ  スター・ウォーズ エピソード2  スタン・ブラッケージ ハンドペイント作品集  ストレンジャー・ザン・パラダイス 
5ページ スナッチ  スパイ・ゾルゲ  スパイ・ゲーム  スパイダーマン  スラムドッグ・ミリオネア  007ダイ・アナザー・デイ  洗濯機は俺にまかせろ  千と千尋の神隠し  ダウン・バイ・ロー  ダウン・バイ・ロー  チョコレート  血を吸う宇宙 
6ページ ディープ・ブルー  天国の口、終りの楽園  天使突抜六丁目  東京物語  トータル・フィアーズ  Dr.パルナサスの鏡  ドグマ  友達の恋人  トリプルX  ドリヴン  ナイト・オン・ザ・プラネット  2046 
7ページ 25時  猫の恩返し  ノーカントリー  野良犬  PARTY7  バートン・フィンク  バーバー  パール・ハーバー  バーン・アフター・リーディング  ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式  白昼堂々  幕末太陽傳  8人の女たち  バッド・ルーテナント  バベル 
8ページ 発狂する唇  ハリー・ポッターと賢者の石  パレルモシューティング  ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い  パンズ・ラビリンス  反則王  バンドワゴン  英雄〜HERO〜  ピストルオペラ  ビッグ・フィッシュ  ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け  ヴァイブレータ  不思議の世界絵図 
9ページ ふたりの男とひとりの女  ブリスター!  フル・モンティ  ブロウ  ボイス・オブ・ムーン  ボウリング・フォー・コロンバイン  僕らのミライへ逆回転  ホテルスプレンディッド  ボラット  麻雀放浪記  MAD ABOUT MAMBO  真夜中まで 
10ページ マルホランド・ドライブ  ミステリー・メン  ミニミニ大作戦  ミッドナイト・ラン  ミラクル7号  メルシィ!人生  メン・イン・ブラック2  モンスターズ・インク  メトロポリス  ヤーチャイカ  約三十の嘘 
11ページ 焼け石に水  ヤマカシ  ヤンヤン 夏の想い出  ライフ・イズ・ビューティフル  ラウンド・ミッドナイト  ラスベガスをやっつけろ  ラットレース  リトル・ダンサー  リミッツ・オブ・コントロール  レクイエム・フォー・ドリーム  レニングラードカウボーイズ・ゴーアメリカ  ロード・オブ・ザ・リング 
12ページ 私の好きなモノ全て  私の夜はあなたの昼より美しい
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愛の流刑地
2006年/日本/125分 監督:鶴橋康夫 出演:豊川悦司/寺島しのぶ/長谷川京子/仲村トオル
この映画での陣内孝則の演技は、今までで私が見た全ての映画の中で最悪の部類に入る。彼の出演時間が短かったのでよかった。「あのエロ小説を、よくぞここまで作品として仕上げた」というような前評判もあったが、そんなに魅力的ではなかった。今年(2007年)の作品だが、えらく古臭く感じる。撮り方が古臭いような気がする。監督は、鶴橋康夫。テレビドラマ40年のキャリアを持つ大御所。だが、映画に関しては新米にすぎないわけで、いたるところでテレビ的なカメラワークが多用され、テレビ的な顔演技を求めるだけのアップのシーンも多い。寺島しのぶの役どころは、とても難しい。赤目四十八瀧心中未遂のような世の中からかけ離れたようなキャラや、ヴァイブレータのような等身大の女性を演じると魅力的なのだが、今回はもっと難しい演技だったような気がする。恋愛映画で人が死ぬのは、飽き飽きさせられる。この映画でも人が死ぬが、個性がある。まず、冒頭でいきなり死ぬ。ストーリーとしては面白い。そして、勝手に不治の病で死ぬのではなく、自分の手で殺している。そして、冒頭では事故のように殺したように見えて、だんだん話が進むに連れて内面まで深く掘り下げられていく。死が、青春の通過儀礼のような「終わり」ではなく、ずっと「つづく」感じに描かれている。死によって物語が終わるわけではない。大人の映画なのだ。
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アイ・ロボット
2004年/アメリカ/115分 監督:アレックス・プロヤス 出演:ウィル・スミス/ブリジット・モイナハン/アラン・テュディック/ブルース・グリーンウッド
「A・I」に比べると、話にまとまりがない。監督の理性のネジがいい感じに弛んでいる。原案がアレなので仕方がないが、SFというよりも、ハリウッドで無限に作られているコップ(刑事)物の映画だ。コップ物というのは犯人がマイノリティな人々で、社会性を浮き上がらせるような展開が多い。今回はマイノリティである犯人がロボットになっていて、犯罪を犯すだけでなく革命を起こしている。「ロボット・イコール・アラブ人」のような無意識の危機感が全体を覆っていた。映画の最初で日常的なロボット社会が描かれているが、あの調子で地味に最後までいくと、もっとリアルで面白くなったはずだ。だんだん話のタガがゆるくなっていって、大風呂敷を広げすぎたように、うそっぽくなってしまったのが残念だ。ウィル・スミスはいい役者だ。私は英語が分からないので、ウィル・スミスの韻を踏んだり言葉遊びや気の利いたことを言ったりする部分がなかなか分かりづらい。エディ・マーフィーよりクールな分、ウィル・スミスは日本人には受け入れづらい側面を持っている。日本語訳をもっとうまくすれば、もっと面白くなったような気がするのだが。最後のエンドロールの文字の出し方がかっこよかった。ロボットの動きが面白かった。工場で整然と並んだロボットの静かな姿と、最後に襲いかかるロボットの激しい姿。静と動をうまく使い分けていた。ロボットの「死刑」を描くシーンが印象的だった。
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アダムス・ファミリー2
1993年/アメリカ/94分 監督:バリー・ソネンフェルド 出演:アンジェリカ・ヒューストン/ラウル・ジュリア/クリストファー・ロイド/クリスティーナ・リッチ
唯一家に持っているビデオがこれだ。ラウルジュニアがめちゃめちゃハマっている。蜘蛛女のキスやストリートファイターなど、アクの強い役者だ。それと赤ちゃんがかわいすぎだ。私も子供ができたらひげを書いてやりたいと思う。インディアンが反乱する劇がよかった。あのメガネの子が外見も内面も私にそっくりだった。キスしたあと二人とも口をぬぐうギャグがあるのだが、私も過去にそれをやって驚かれたことがあるので笑えなかった。私自身がアダムス一家の一員みたいな部分がある。ラウルの兄貴が、鼻にパン突っ込んで彼女の気を引こうとしてたけど、私もそんなことしていたような気がする。最初から最後まで、すばらしい脚本ではなかろうか。見所も満載だ。最後はマジデビビッタ。
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あなたにも書ける恋愛小説
2003年/アメリカ/95分 監督:ロブ・ライナー 出演:ケイト・ハドソン/ルーク・ウィルソン/ソフィー・マルソー
あまりにも軽すぎるラブコメディー。でも新鮮な感覚で、楽しい気分で見ることができた。物語中にさらに物語を入れるメタな話の展開が面白かった。ケイト・ハドソンは、日本人のような外見だ。髪の毛を脱色したOLのような感じ。身近な感覚がいい。しかめっ面が魅力的だ。バス停でこけるシーンで、親近感がわいた。最後のシーンはうれしかった。男性の私にここまで感情移入させてしまう演技がすごい。後半でソフィー・マルソーが現れるが、夕暮れから夜にかけての暗いシーンで、あまりきれいに撮れていなくて残念だ。ルーク・ウィルソンの不自然な演技が面白かった。最初の、借金取りから隠れるシーンがあまりにも挙動不審なので爆笑してしまった。ただ「普通の」演技をしていないので、人によって評価の分かれるところだと思う。体格がかっこいいので、もう少しダサくても良かった気もする。
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アフタースクール
2008年/日本/102分 監督・脚本:内田けんじ 出演:大泉洋/佐々木蔵之介/堺雅人/常盤貴子
最初の朝食の場面に、テレビドラマ的なとってつけたような生活観の希薄さを感じ、ちょっとイヤになったのだが、まさか、こういうストーリーになっているとは思わなかった。狭苦しいカメラ、舞台、日常描写。全てがテレビドラマのような画面の感触でありつつも、ストーリーには映画ならではの奥行きと立体感がある。不思議な感覚。日常にも、様々なドラマがひしめいているようなドキドキ感。実際の私たちの周りを見回しながら、ワクワクするような気分になった。新しい世界の見方を手に入れたような達成感まで味わうことができた。私にとっては、新宿区民になって十年以上経過しているので、東京が舞台になっているだけで親近感があり、見ていて楽しかった。現実から逃げようとしている探偵が、首ねっこをつかまれて、現実から逃げているように見える行方不明者を追う。枷がたくさんあり、トリックもある、スピード感を持ったいいシナリオ。役者は全員、すっとぼけた感じで、独特の感触。テレビドラマだと共演者がひどいので学芸会っぽく見えることもあるが、この映画では広がりのあるストーリーを吸収する懐の広さを出演者たちから感じた。会話の間が楽しめる。四課の刑事や、ヤクザは、リアルだった。堺雅人の演技が一番面白かった。私が今まで見た中で、一番最悪だった舞台は彼の出た東京オレンジだったのだが、あれからだいぶ時間が過ぎた。大人の俳優を前にした時の、ふき飛ばされがちな彼の存在感の希薄さは、なかなか見ていて味があった。映画館を出てからダッシュで帰った。それくらい元気になる映画だ。
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いかレスラー
2004年/日本/92分 監督:河崎実 出演:西村修/AKIRA/石田香奈/ルー大柴
イギリス映画「えびボクサー」にヒントを得て製作されたらしい。「えびボクサー」は、ギャグだけでなくリアルな成長物語にもなっていて完成度が高いが、リング上でのボクシングシーンを描かなかった部分が致命的だった。このいかレスラーでは、きちんとプロレスシーンを描いているので好感が持てた。ただ、主題歌の熱唱や試合での倒立ムーブがあるにせよ、「ジャニーズ・ファイター」(10年前のニックネーム)、「無我の伝道師」(04年現在のニックネーム)西村修の素材を活かしきれていなくて残念だ。俳優としてはAKIRAよりも素質があると思うのだが。台本を無視して西村のフリートークをバンバン入れていけば映画史上に残る怪作になったはずだ。画面からはB級映画以上に自主製作映画の雰囲気が出ている。画面が必要以上に狭苦しい。後楽園ホールで撮影すれば迫力が出たと思う。「25時」の何日か後に見たせいかもしれないが、全ての役者の演技がへたくそに見えた。この内容で1800円は高い。劇場には15人も客がいたけど。
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インセプション
2010年/アメリカ/148分 監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン 出演:レオナルド・ディカプリオ/渡辺謙/ジョセフ・ゴードン=レヴィット/マリオン・コティヤール
どこまでが始まりで、どこまでが終わりであるのか。想像の世界では、それは定かではない。夢のように、目覚めてしまうと思い出せないような世界の中で、物語が繰りひろげられていく。不条理ではなく、きちんと論理的な道筋を立てて話を組み立てていく手法が鮮やかだ。時系列をわざと前後させるようなシナリオ展開も効果的。こういう夢のシーンが多用された映画では「いかに設定が破綻しないか」が重要だと思う。その意味では最後まで矛盾なく進んでいったので気分よく見ることができた。話が進むにつれ、人間存在がどんどんどんどんものすごく薄っぺらくなっていくような、それでいて自分の中の理想や夢がどんどんどんどんクリアになっていくような、今後の未来を象徴するかのような現実感覚まで味わえることができて有意義だった。これだけ刺激的な設定でも、銃撃戦をたたみかけるハリウッド映画の手法はギャグに近い。アメリカ人にとっての銃撃戦は、昔の香港映画でカンフーの場面が入ってくるようなお約束ごとなのかもしれない。銃社会の影響なのか、西部劇の影響なのか、なにか底知れぬものを感じる。映像的には、ディックの小説「ユービック」のような危険な感覚を味わえてよかった。リアルな空想世界が広がっていた。もはや映画は、なんでもできる。今こそ「ユービック」の映画化を希望したいものだ。「いかに非現実な設定をリアルに見せるのか」という意味で、役者も大変。「もっともらしさ」ではいいキャスティング(渡辺は演技らしいことはしなかったが)。ディカプリオだとインセプションになり、トム・クルーズだったらナイト&デイになる(作品の良し悪しというより住み分けの問題)。
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ウォーターボーイズ
2004年/日本/92分 監督:矢口史靖 出演:妻夫木聡/玉木宏/平山綾/眞鍋かをり
フジテレビとか電通とかアルタミラが撮った体育会系映画。何気ない日常の1コマを切り取り、「面白い瞬間」をさりげなく観客に見せる制作姿勢に好感が持てた。イルカショーの調教師がシンクロを教える設定が最高だ。思わずご褒美の魚を投げて「あ、まちがえた」というシーンが面白い。(でもそのときなぜ魚持っていたのか分からなくて不自然だ。バケツを持っている仕事中に生徒が出てきて「イルカの先生、演技ができました。見てください!」と引っ張って、水族館のプールで泳ぐのを見せる方が自然だな。)カメラがちょこちょこ動いて気持ち悪かった。テレビテレビしてる構図がいやだ。はじめから構図考えておけばいいのに。題材は身近で好感が持てたが、演出が漫画チックすぎる。演技がよくない。顔を不自然に硬直させるシーンが何度もあったが、もったいない。「先生がシンクロを見せて、生徒の方を向いたらだれもいなくて顔を硬直させた5人だけいる」シーンがある。そういう演出は作り手は楽だろうけど面白みがない。「先生がふり向いたら、複雑な表情を浮かべている生徒がびくっとしつつ、無言で向き合うシーン」の方が面白いと思う。竹中直人はいつになく活き活きしている。自分で監督しない映画の方が面白い。他人が監督だと食ってやろうとしちゃう性格なのかもしれない。ただ、頭に火がついて飛び込んだりイルカが飛んだりするスローモーションの演出がいい。いきなり走り出すのと銭湯のシンクロなど、元気いいので見ていてこぎみよかった。クライマックスのシンクロシーンのカメラは、スローモーションとか使って水しぶきとかもっとキレイに撮ればいいのに、ちょっと残念なできだ。演技もあれでは組体操だ。泳げない生徒はいつ泳げるようになったのだろうか?暴れはっちゃくみたいな映画だった。
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姑獲鳥の夏
2005年/日本/123分 監督:実相寺昭雄 出演:堤真一/永瀬正敏/阿部寛/宮迫博之
原作があるくせに脚本がダメだ。大学の講義を聴きおえた感覚に近い。あの原作をまとめただけで評価できるが、エンターテイメントとして完成するだけの力が及ばなかった。1対1での会話が終わった後は、また1対1の会話の場面。それが最後まで続く。役者同士のかけあいがないため、退屈になってしまう。最初の導入部分で京極堂が話した、現象学の上っ面の講釈はいらない。バーチャルリアリティという言葉は昭和20年代にはなかった言葉だ。登場人物に奥行きが感じられない。すごく平面っぽい。それぞれの人物にいろいろ目的とかあっただろうけど、省略してしまったために、ほとんどドラマが見られない。刑事、京極堂、探偵、作家、女の子など、解決する側の人物が多すぎるのがいけなかった。監督の力量で無理やり作品にしている。カメラ的にはおとなしく撮っていて、落ち着きがあって、古めかしさを出していて味がある。時おり連続で放たれるカットバック的なイメージ描写が、シナリオの退屈さと噛みあっていらいらした。阿部寛が普通の人を演じている映画を、私は見たことがない。2作目も劇場で見たが、悪趣味すぎだった。難しい題材だ。
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海辺のレストラン ガスパール&ロバンソン
ガスパール/君と過ごした季節
1990年/フランス/93分 監督:トニー・ガトリフ 出演:ジェラール・ダルモン/ヴァンサン・ランドン/シュザンヌ・フロン/ベネディクト・ロワイアン
この映画、邦題が二つある。どっちも副題があって、ものすごく、まぎらわしい。監督トニー・ガトリフ出演ジェラール・ダルモン、ヴァンサン・ランドン。鏡の前でおばあちゃんの髪をとかし、首飾りをつけるのを手伝っているシーンが印象に残った。ここに出てくる役者、私は一人も知らない(ジェラール・ダルモンだけ、ファッシネーターというエロ映画で見たことがある。)のだが、みんなすごい。活き活きしている。演劇みたいだったけど、舞台に収まりきれない元気さだ。トラックで走り回ったり海辺を走ったり、イスが燃えたりする場面が元気だ。海がきれい。おばあちゃんの演技がすごいと思った。ガラスを割ったり、ペンキ塗り立てのいすに腰かけたり車運転したり。看板見て喜ぶアップのシーンはいいと思った。元気だけじゃなくて、泥棒シーンでメリハリつけてて物語のテンポもいい。後で調べたら、「ガッジョ・ディーロ」を作った監督だった。あの映画は以前に早稲田松竹で二回見た。ジプシーの歌をたずねに行く青年の話。どちらも主人公が素朴だな。セリフよりも笑顔で語らせるような監督だ。やさしさを感じる。共感できた。
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AI
2001年/アメリカ/143分 監督:スティーブン・スピルバーグ 出演:ハーレイ・ジョエル・オスメント/ジュード・ロウ/フランシス・オーコナー/サム・ロバーズ/エイドリアン・グレニアー
原案がスタンリー・キューブリックで監督がスティーブン・スピルバーグ。死んじゃうと監修承認の必要がなくていいなあ。「〜にささげる」とかやれば宣伝効果抜群だ。スピルバーグもキューブリックもそんなに絡んでないと思う。たまたまキューブリックの死後、生きていた映画の企画をドリームワークスが買い取っただけなのではないか。性描写シーンや暴力シーンが出ないスピルバーグらしさが、オレンジを期待した私には邪魔だった。作家性にあふれているかと思えばそうでもなく、ファミリー向けでもエンターテイメントでもない、コントロールが定まらない印象を持った。超大作だが、映画そのものの魅力がない。ただ、SF的な視点から見ると、いろいろと興味深かった。ジョージがよかった。最後のシーンがいらないという人もいるが、私はそうは思わない。日常の異化作用が出ていて、普通の日常の描写になればなるほど異様な雰囲気をかもし出していてよかった。最後のシーンは、タルコフスキーの「ノスタルジア」でろうそくの火を消さないで歩くシーンのように、評価が分かれるところなのだろう。私はどちらも泣きました。私の好きなSF作家のイアンワトソンやブライアンオールディーズの名前がクレジットにあったので、少しうれしかった。有名どころのスタッフをそろえた割には絵が安っぽかった。映画館の中でずっとサングラスをして見ていたせいもあるだろうが、外す気になれなかった映像の方を責めるべきだろう。青い妖精がよわいなあ。安っぽさを強調するように映せばいいのに中途半端な存在だ。潜水艦と妖精の対面するシーンを、もう少し気をつけて撮っても良かったのではないか。その場面だけで、いいポスターができるのに。ライティングが甘かった。結局監督不在の映画だから、どこに光を当てたらいいのか分からなかったんだろう。自分の生まれた場所を確認するシーンが印象深かったが、細胞分裂していく人間の方が、ロボットよりも異常な誕生の仕方なんだろうなあ。自分の細胞分裂を追体験していく作品を見てみたい。ロボットの描写をとおして人間の異様さに気づかされて、なかなか刺激的だった。
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映画は映画だ
2008年/韓国/113分 監督・脚本:チャン・フン 出演:ソ・ジソブ/カン・ジファン/ホン・スヒョン/コ・チャンソク
原題は「Rough Cut」。いい響きだ。この映画を見た時、私はベロベロに酔っていた。カメラやアクションや演出に見られるような拙さが、アルコールのせいであまり気にならなかった。分かりやすいストーリーが気分よかった。「本物のヤクザがヤクザ映画に出たらどうなるか」一つのアイデアが、雪崩のような躍動感で描かれている。ヤクザはもちろん演技ができないので、全部本気。「演技ができないから本気で殴りあい感情をぶつけるヤクザを演技する」のと「ヤクザの本気の演技に驚く俳優を演技する」という2人の役者の非常に高度なテクニックを味わえる。強烈な個性のぶつかりあい。勢いのままに俳優の魅力が浮かびあがる。ソ・ジソブは松田優作みたいだ。普通に立っているだけで、危険な雰囲気がある。ホテルの廊下を歩いているだけで絵になる、骨太の役者だ。家庭教師の役をやると面白いかもしれない。最後の、泥だらけの殴りあいのシーンは、すごく魅力があった。色がなくなって、動きだけがハッキリ分かる。目と口だけが泥の色をしてないので、迫力が出ていた。「映画の撮影」ではなく、「男と男の決闘」まで昇華させた勢いは、感動的。他にもいいシーンが多い。刑務所での面会で囲碁をしながら会話するシーンが絵的にも決まっていてよかった。子分とスローな殴りあいをするシーンが印象に残った。シナリオとしては、映画の中に書かれているセリフによって、俳優になるきっかけや敵を生かしてしまうきっかけを与えている部分に面白さを感じた。
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英国王給仕人に乾杯!
2006年/チェコ/120分 監督:イジー・メンツェル 出演:イヴァン・バルネフ/オルドジフ・カイゼル/ユリア・イェンチ/マルチン・フバ/マリアン・ラブダ
「刑務所から出てきた初老の男が一人で山小屋に住むことになる。音を出す木を探しに来た老人が現れ、隣に住むようになる。老人はきれいな女と住んでいる」なかなかいい設定だ。普通の作り手ならドラマにする。しかし、この映画では、なんにも起こらない。代わりにスクリーンに現れるのが、生々しさのない、傍観者的視点で描かれたチェコの現代史だ。現代史といっても、おとぎ話に近い。変わった感触だ。「チェコの映画賞を総なめ」という売り文句は、「全米ナンバー1」以上に信用ならない。なぜならチェコでは数えるほどしか自国の映画が上映されないから。というよりも、イジー・メンツェル、シュヴァンクマイエル、マルティン・シュリーク(彼はスロバキアか)以外に活躍しているチェコの映画監督がいるのだろうか。ドラマ性もなく、人物に葛藤もなく、現代と昔を織り交ぜる構成に全く意味がない。かといって、私自身はリラックスして楽しめた。大して斬新でなく、奥行きを感じさせないカメラだが、構図がしっかりしているせいか、まるで絵画を見ているかのような美しさがある。ストーリーや現代性や自己表現を突き放したクールな視点を感じる。押しつけがましさ、よく言えば個性がないぶん、心穏やかに眺めることができる。観客のそれぞれにさまざまな解釈を許すことのできる自由な雰囲気を感じる。どうも、ハリウッドのような規準からはみ出ているような気がする。しかし正解はどこにもない。こういう映画があってもいいのではないか。女性の裸体は、官能的というよりは祝祭的な雰囲気を出すために使われているようだ。歴史の不条理をおとぎばなしのような楽しい風呂敷で、やさしく包みこむ。しかめっつらして見るのではなく、少し余裕を持たせて楽しむぐらいでちょうどいい。平面的で絵画のような世界をたくさんの人物が通りすぎ、ビールで乾杯。ピルスナーの故郷ならではの国民性か。祝祭的な気分にあふれる。チェコへの愛国心あふれた映画だ。チェコ人の立場なら、さらに面白い映画なんだろうな。
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英国王のスピーチ
2010年/イギリス・オーストラリア/118分 監督:トム・フーパー 脚本:デヴィッド・サイドラー 撮影:ダニー・コーエン 出演:コリン・ファース/ジェフリー・ラッシュ/ヘレナ・ボナム=カーター/ガイ・ピアース
チャールズ6世のスピーチを以前聞いたことがあるが、衝撃的だった。ゆっくりしゃべっているのだが、途切れ途切れなので、なにを言っているのかTOIEC730点の私には理解できなかった。背後に、こういう物語が隠されていたことを、この映画ではじめて知った。たまたま金沢旅行中で暇だったので、金沢シネモンドというアットホームな映画館に入って見た映画。トム・フーパーという、1972年生まれの監督の存在を、この映画ではじめて知った。映画を見終わってから、アカデミー作品賞を受賞したと知った。英国王室をバカにしたコメディではなく、登場人物とその時代に、優しさを感じる。史実を基にしたというよりも、史実以上に普遍的な物を扱っている。練りに練られた脚本だ。シナリオ的には抜群の枷。「スピーチが仕事の人間が、吃音のためスピーチができない」という構造的には非常にシンプルな枷だが、それを英国王室まで持ってきたところに魅力がある。撮影的には、落ち着いた色合いで、しかも劇場的な風格を持たせて撮影しているので、映画というよりも、舞台を見ているような臨場感があった。長回しの部分も、全く違和感がない。コリン・ファースの演技力がさえ渡っている。単に威張りちらしているだけではなく、内気で自信がないわけではなく、完全に血の通った人間として演技している。ヒトラーの演説も混ぜた演出は、素晴らしい。この発想は素晴らしい。正義を表現するのはたどたどしいスピーチなんだ。ああ、この平和的なスピーチのおかげで平和が訪れたのかもな、となんだか歴史の、世界の真理にも近づけた気分になった。「アイ・ハバ・ボイス!」と叫ぶシーンに感動した。それにしても、国王を等身大の人間に描く演出が秀逸だ。全国民、かつ、1人の人間に向けたスピーチが友情で満ちあふれる所に、映画を越えた優しいなにかを感じた。
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おいしい生活
2001年/アメリカ/95分 監督:ウディ・アレン 出演:ウディ・アレン/トレーシー・ウルマン/ヒュー・グラント
「魅惑のアフロディーテ」以降、私にとって親しみやすくなったウッディアレンの新作。カメラ・音楽共に小品的な味わいだ。「魅惑の〜」にボクサー役で出てた役者もまた出ていたが、彼に代表される、肩の力が抜けた感じが気持ちいい。こういう軽めのコメディを立て続けに作ってくれるのは、非常にうれしく楽しい。恵比寿ガーデンシネマ、君が正しい。アレンの映画は年齢と共に小難しい議論がだんだん減っているのではないか。インテリのペットではなくなったと思う。銀行強盗とクッキー屋成り上がりストーリーが前半部分だけで残念だった。壁をほったら、水道管が破れて水が噴き出す。下らなすぎる。ベタベタだ。でも楽しい。ハタから見て無教養で成金だけど、憎めない夫婦の演技がよかった。わかれた男にプレゼントを「返してよ」というシーン。なんだかかっこ悪い。普通だったらこのセリフ、マイナスイメージを持つ。だが、この作品は、逆。「ああ、この人なら当然こう言うだろうな」と、納得がいく。そこがうまい。ふらふらと肉団子スパゲッティを食べたいなどとぶつぶつ言いながらビールを注いでいるウッディアレンがいい。男の中の男。人間描写に味があるんだな、この場合の味は成金趣味のものではなくビールにクッキーの味なんだな。ロマンチックコメディみたいなのは他の役者にやらせて、自分が出る映画では趣味の意味合いが強いような気がする。老人の役者が無理に親父役をする意味で「男はつらいよ」みたいだ。アレン役=アレンみたいな。たまには中年オヤジよりもおじいちゃん役をやる映画も見てみたい。きっと、W・C・フィールズみたいになると思う。
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