ダークロHP
小市民ダークロの
ありがちで気の抜けた
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短文集その7
男と女がベッドで性交して、その後、服を脱いで、その後、キスをして、裸のまま、外へ出て行く。
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ゴミハウスに猫の鳴き声。ゴミ捨て場に猫が捨てられていたので、そのままゴミハウスの住人が家に連れて帰ったという。
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人生の成功者だけが集うオープンカフェ。代官山にあるという。なぜかケーキは置いてなく、硬いホッドドッグを売るという。店の正面には人生の敗残者だけが集う、ヒデブバーがある。ヒデブバーではいつも怒号と喧騒に満ちあふれている。
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オープンカフェで、カンパリソーダを疲れきった夕暮れに飲む。そろそろ5月だ。だいぶ日がのびた。毒だか薬だかわからないような味がする。あのフルーティな、健康的な色にだまされてはいけない。あれは着色料だ。毒々しい赤。イタリアで作られた原料非公開のリキュールがその正体だ。発泡した二酸化炭素に口の中を拡散させると、明らかにコリアンダーのようなハーブのさわやかさが際立つ。そして柑橘類。果実の苦々しさだけを抽出させたような香りが夕日にとろけていく。夏の現実。レモンスライスとダンスをしているような月が浮かびあがる。その一口が一日の終わりで夜の始まりだ。脂身が豊富な料理と相性がいい。ギトギトした人間関係の脂身も吹きとんでいく。ジンがそうであるように、カンパリソーダも夏の味がする。心の中に激しい夕立が起きたかのような、一瞬のざわめき。そして倦怠感。いい夢を見れそうな気がする。見たい夢は特にないけれど。カンパリソーダは鮮やかな赤い夢を見るか。そして苦々しい夢を見るか。
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ウンコオリンピック

アナウンサー:オリンピックも中盤戦にさしかかり、いよいよ成人男子トイレ自由形がはじまります。この競技では一番でかいウンコを競います。
選手がウンコをしていく。審判がメジャーでウンコを計量していく。選手たちがどんどん現れてはウンコをしていく。選手たちの演技に熱狂するスタジアムの観客。
アナウンサー:さあ、日本の期待の星、雲庫出流雄が入場してきました。この4年間、耐えに耐え、溜めに溜めてきました。今こそ全力を発揮する時です。天国のお母さんも見守っています。気合が入る。お母さんのためにも、この競技、なんとしても勝たなければならぬ。見ててくださいお母さん。アジア予選ではあんなに大きく出しました。力が入ります。さあ、飛び出した!
雲庫選手が倒れている。ウンコは出ていない。
アナウンサー:おっと!どうした雲庫。
担架で運ばれていく雲庫。
場内アナウンス:ただいまの雲庫選手は棄権です。
解説者:溜めすぎですかね。体調が万全ではなかったようですからね。
アナウンサー:いやあ、日本にとって残念な結果になってしまいましたね。さあ、次はウンコール選手です。おっと!これは強烈だ。
解説者:あまりテレビで映さないほうがいいですね・・・。
巨大なウンコに手足が生えて、スタジアムを走っている。屈伸運動をしたりしている。
アナウンサー:こ、これは、そうとう鍛えられていますね。
解説者:あまりにウンコに接してきたせいで、ウンコそのものの外見になってしまっているんですね。
アナウンサー:さあ、ウンコール選手。セットポジションに入りました。
ウンコール選手が動かない。いつまでたっても変化がない。
アナウンサー:おおっと!どうしたんだ!アクシデントか!
解説者:棄権ですかね・・・。
場内アナウンス:ウンコール選手の記録。1メートル80。
ウンコールの全身から湯気が立っている。手足が消えて、ウンコしか見えない。
アナウンサー:どうやら身も心もウンコになってしまったようです。
解説者:見た目のわりに、記録的にはふるいませんでしたね。
アナウンサー:さあ、いよいよ次はギリシアのフンバリー選手です。場内からはブーイングと共に悪臭が漂っています。前回の銅メダル獲得選手です。
フンバリー、笑顔で入場。フンバリーのあごは、2つに割れている。フンバリー、自信満々でしゃがむ。
フンバリー:ムッフン!
ぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶり!
解説者:おお!
アナウンサー:おおおおおおっっと!これはすごい記録だぁ!
上空に飛び上がるフンバリー。ロケットの煙のごとく、ものすごい勢いでウンコが発射される。スタジアムを越えて見えなくなる。
場内アナウンス:ただ今の記録。203メートル14。203メートル14。
スタジアムに巨大なウンコの山ができる。上空のヘリコプターからの映像で、かろうじて頂上に立つフンバリーが見える。
アナウンサー:203メートル14!これは世界新記録です!世界記録が誕生しました!
解説者:いやあ!会心の演技でしたね。見事なまでにキレのいいフォームでした。
アナウンサー:さあ、この競技も残り2名になってきました。雲知打須選手の入場です。前回の銀メダル選手。
雲知打須:糞(ふん)!
だっふぅぅぅぅぅうぅぅうぅぅうぅぅん!
巨大な隕石のようなウンコが上空に上がっていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
日蝕のようにスタジアムが暗くなる。やがて周囲が明るくなり、ウンコがどんどん見えなくなっていく。
場内アナウンス:ただいまの記録、宇宙。計測不能。計測不能。
アナウンサー:信じられません!奇跡が起きました!場内がまだ、どよめいています。
解説者:初のK点越えですね。
アナウンサー:気象衛星からの写真が届いております。
写真では、月と地球といっしょにウンコが漂っている。月よりも地球よりも大きいウンコ。
アナウンサー:ただいま入った情報によりますと、雲知打須選手のウンコは衛星軌道に乗ったとのことです。
メガネをかけ、やせこけた白人男性が現れる。スキップしながら入場。
アナウンサー:さあ、最後に登場するのはベンピシッコ選手です。シッティングゾーンに入ったベンピシッコ選手、外肛門括約筋を念入りにゆっくりとマッサージしています。どうですか?逆転優勝はありえますでしょうか?
解説者:そうですね〜。前回のオリンピックから一度も世界大会には出場していませんから、不安が残りますね。母国では慢性便秘のため引退したと報道されたこともありました。括約筋の断裂で1年間のリハビリ生活も経験していますから、以前のような記録は望めないかもしれませんね。
アナウンサー:さあ、4年ぶりの晴れ舞台で、どんなウンコを見せてくれるのでしょうか。前回優勝者の復活なるか。
ベンピシッコがパンツを下ろした。
ベンピシッコ:ブリブーリ、プリプリプリ、ブゥゥゥ!(これがおれのウンコだ!)
ピカッ!
観客の目には、かつてないほどの巨大なウンコが、一瞬見えた。時空がゆがむ。
その時、ウンコは宇宙を超えた・・・!!!!?
I am UNKO。
・・・・・・・・OK。
We are in the UNKO。
巨大なウンコの内側に、宇宙が見える。ウンコが宇宙を包みこんでいる。
あなたはウンコと共に。
ウンコはあなたと共に。
静まり返る場内。やがてスタジアムにはお尻を拭いているベンピシッコの姿が見える。ウンコはどこにも見えない。
場内アナウンス:ベンピシッコ選手の記録、ゼロ。記録、ゼロ。
アナウンサー:ああー!我々はあのウンコを見たはずなのに!見たはずなのに!ウンコの姿が見えなーい!
解説者:パチパチパチパチ。(涙を流しながら拍手している)
雲知打須:奴め。おれたちの心の中に、ウンコをしやがった。
ベンピシッコ:ブリッブブブブリッ!(ふん!クソッたれが)
ベンピシッコ、去る。
  △

高田馬場スーメン

鈴木:腹減ったなあ。さっきから全然列が進んでないぞ。
山田:え?おまえ、なにも食べてこなかったの?
鈴木:ああ。朝からなにも食べてないよ。
山田:いや、さっき電話したとき、なにか食べてこいよ、って言っただろ。
鈴木:またおまえのつまらない意味不明なジョークだろ?だって、ラーメン屋行くのに、なんで食ってこなきゃいけねえんだよ。それにしてもスゴイ行列だな。おっと、かなり進んできた。
山田:ああ、なんか、店長が気に入らないことがあったんじゃないかな。店長に蹴散らされてるぞ。並び方が気に入らないとか。頑固オヤジだから。
鈴木:並び方にもルールがあるのかよ。ここまで並んで、店に入れないのはつらいぞ。
山田:そうだな。ルールっていっても、さりげなく並んでるかんじを装って、別にラーメンなんか食べたくないんだぞ。別にハンバーガーでもカレーでもいいんだからな、って、あまり食欲とか意欲をみせるとダメだな。
鈴木:なんだそりゃ。お、スゲーいい匂いだ。
山田:そりゃ、高田馬場スーメンだからな。
鈴木:有名店だろ?こりゃ、期待できそうだね。しょうがない。がんばるよ。
しばらくして、2人、店に入る。店長が腕組みしながら2人をにらみつける。
鈴木:あれ?カウンターがらがらだぞ。すいてるじゃん。
店長:お客さん、トッピングはなににする?
山田:塩ください。
鈴木:トッピング?なのか?塩って。じゃあ、おれは味噌の大盛!
店長:お客さん、味噌なんて、通だね!
店長、山田の顔の上に塩を振りかける。
鈴木:え?
山田:いいねえ。香りがツーンとくるね。
鈴木:ど、どういうこと?ねえ!
店長:ちょっと待ってね、そっちのお客さん。味噌とってくっから。
山田が鈴木の腕をヒジでたたく。
山田:おい、鈴木、早く吸えよ。
鈴木:え?え?吸うの?なにを?
山田:吸うんだよ!ほら、うまそうな匂いだろ?
鈴木:まさか、匂いをかぐだけ?この店、わ!マジ?ウソだろ!
山田:早く吸わないと、順番が終わっちゃうぞ!
鈴木:食えないのかよ。ここ。ラーメン屋だろ?
山田:吸う専門店なんだよ。高田馬場スーメン。
店長がオタマに大盛の味噌を盛りつけ、満面の笑みで走ってやってくる。
鈴木:ええ?吸うだけ?味噌!それやめて!
店長:大盛だったね。
鈴木:だからやめて!並!並にします!
店長:ちっ。じゃあ、はい。スーメン200円。もう味わったでしょ?二度づけは禁止だよ。
鈴木:金払うの?ちょっと待って!店長!おれ、食います!食いますよ!
店長:お客さん、なにを食うんだよ。
鈴木:ラーメンですよ!ラーメン!
店長:お客さん。いいのかい?
カウンターに向かう鈴木を止める山田。
山田:鈴木、やめろ!死ぬ気か!
鈴木:絶対うまいって!
山田:食べたことのある俺が言ってるんだぞ!全然うまくないんだよ!匂いがいいだけだから!
鈴木:そんな馬鹿な!こんだけいい匂いの食べ物がまずいわけないだろ!都市伝説だ!おやじ!味噌の大盛!鼻に入れるんじゃなくて、腹に入れるやつ!
店長:はーい!ほいじゃ、注文しないならあんたは出てってね!塩スーメン300円。
山田:鈴木〜!
店長:ほら出ていかんか!
山田:ああ〜!
(ナレーション)山田:あれは、3年前だっただろうか。その日以来、私は鈴木に会っていない。味もだいぶましになってきたのか、なにかの中毒性があるのか、それとも味覚を持たない者たちが匂いにごまかされて食べているのか、最近では、食べる用と吸う用の2列ができた。彼らは店の前で長い行列を作って、高田馬場の狭い通りをさらに狭くさせている。
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浜辺の太郎

太郎が、カボチャを持って砂浜にやってきた。しばらくすると夏がやってきて青空に入道雲を描きはじめた。あまり上手な絵ではなかった。目の前では8人のサーファーたちが、波のうねりをとらえようとしていた。絶好のサーフィン日和だった。水平線の向こうで太郎を呼ぶ声がした。太郎は横になって眠り、気づいたら誰もいなかった。太郎は小銭を拾いつづけた。次郎もすぐそばで砂浜の砂の粒を数えていたはずだったが、いつのまにかいなくなっていた。まだ近くにいるのかもしれない。でも、太郎の知覚の認識の外にいた。今は砂の底にいるのかもしれない。波は砂粒を運びこみ、砂粒を運びだし、いつまでもやってきていた。よく見ると、波は月の引力のせいで動かされているようだった。自分では動きたくないように見えた。太郎は500円玉を拾った。満天の空に星が輝いていた。それらは太郎が集めた小銭だった。人々が波と同じようにやってきて、砂粒と同じように小銭を落としていった。全ては月がしむけたその奇跡。月はその裏側を見せることはなかった。ポケット一杯にたまると、太郎は小銭をつかんで空に投げた。小銭はキラキラと夜空をかけ上がり、月の軌道を回った。やがて星となるはずだった。波の音だけが聞こえた。やがて、太郎は砂の中にいた。砂の中はひんやりとしていた。潮の香りと土の香りが混ざりあっていた。50円玉の下に1円玉があり、100円玉の向こうに、それによく似た別の100円玉があった。その向こうには同じような形の100円玉があった。金属の感触。金属の香り。太郎は掘りすすんでいった。砂の中には次郎がいて、三郎がいて次郎2号がいた。みんな砂の中でそれぞれの探し物をしていた。五郎にはしばらく会っていなかった。五郎も砂の中にいるはずだった。次郎百号には会いたくなかった。次郎百号は太郎たちを集めていた。逃げなくてはならなかった。いずれは太郎も捕まえられて、夜空の星となるのだった。でも、まだ捕まりたくはなかった。太郎は砂を胸いっぱいに吸いこんだ。肺の奥で砂粒がサラサラと音をたてた。より砂の底に。深く深く沈みこんでいった。どこかで太郎を呼ぶ声がした。地の底。海の底。地球の底。太郎の底。やがて、太郎は砂に流されていった。潮の満ち引きと同じように、地球の底には砂の満ち引きがあった。太郎は流されていった。だんだん暖かくなっていった。地球の底に流れついた。オレンジ色のマグマから飛沫が飛びちり、溶岩の粒が冷えて小銭になった。太郎が、キラキラと輝く生まれたばかりの100円玉を拾った。小銭はまだ熱かった。製造年の記載は今年になっていた。地球の底では小銭が生まれつづけていった。太郎は小銭の波に押しあげられていった。ひんやりとして気持ちのいい砂を進み、太郎は砂浜に顔を出した。小銭は空高く舞いあがり、太郎もそのまま夜空をかけあがった。太郎は大量の小銭と共に月の軌道を回った。わずかに届く、太陽以外のどこか別の星の光を浴びながら、月の裏側で、かすかに、なにかが浮かびあがっていた。太郎は驚いた。月の裏側には太郎の見覚えのある顔があった。大きな顔だった。様々な色の光線を浴びて、いくつもの階層の影を落としながら、月は、不思議な表情を浮かべていた。笑っているようにも見えた。1円玉。5円玉。10円玉。50円玉。100円玉。500円玉。月の周囲を回る幾千もの小銭が、太陽の光を浴びて、その光を蓄え、やがて、自らが輝きはじめた。月の裏側でも、輝きが失せることはなかった。小銭の光を浴びて、月が虹色に輝いていた。表情が変わっていくように見えた。月は満面の笑みを浮かべていた。太陽の恵みを受けた、その安定した周回軌道の末に、小銭はその行き先を決めたようだった。やがて、小銭は勢いよく月の軌道から離れた。太郎も遠くにはじけ飛んだ。小銭は星になり、星座になり、星雲になった。太郎は永遠の暗闇の中にいて、いつまでも太郎のままだった。太郎は目覚めた。砂浜には誰もいなかった。目の前にカボチャがあった。服が浜辺に散らばっていた。太郎は服を集め、それを着た。帰ることにした。財布がなくなっていた。太郎は空を見上げた。星になったのかもしれなかった。月が消えていた。小銭と共にどこかへ消えたような気がした。そろそろ朝が来そうだった。青白い空が広がっていた。波の音はいつまでも聞こえていた。
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