ダークロHP
小市民ダークロの
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タイタンの存在者



雪が降りはじめた。ここレニンヨークに冬が来ようとしていた。この都市の冬は特に冷える。議事堂関係処理責任者のクロフツは、ガラス1枚隔たれたデスクの中でふるえた。夜中だというのに、周りにそびえる何万ものビルの一つ一つに明かりがともって昼間のようだ。実際、この時計が壊れているとしたら、今は昼間なのかもしれない・・・。
確かめる相手はどこにも見えなかった。クロフツは中枢部へ連絡し、今が夜なのか聞いてみた。中枢部のMCは、正確な時間と今が夜であることを彼に教えた。だが私には納得がいかない・・・。能率を良くするため、中枢部だけに管理される個室での仕事に、彼の体はまいっていた。ああ、なんでこんな所で暮らさなければならないのか。いっそ火星にでも移住しようか。だが開拓して間もない移民地での生活は・・・。確かに精神充足率はむこうの方が高いが、平均寿命を考えればどちらへ住めばよいかは明らかだ。しかし、こことは違うどこかへ行きたい。私は休みたい・・・。

ふとクロフツは、自分の前に置いてある書類と時計に目を向け、仕事が全くはかどっていないことに気づいた。乱雑に散らばった書類を急いで整理する。とにかく今は働かなければ。全てが終わった後で、そのことは考えよう。・・・全てが終わった後で。そうすれば、心の休息も満足に得られるだろう・・・。
「いやあ、今日は冷えますね」
クロフツは、はっとして前方を見上げた。彼の部下のニヨロークがつっ立っていた。
「き、君は、いつ現れたんだ」
「さっきからここにいましたよ」
クロフツは座りなおした。長年の勤務のせいで、現実と空想の区別がつかなくなってきていた。簡単にいえば精神病なのだが、このことは誰にも言っていない。言えば職を失うことになるのだ。クロフツは、この不自然さを悟らせないように、しかめっ面をして相手をにらみつけた。
「なんの用かね」
「はあ」
ニヨロークは間の抜けた返事をした。
「例の追跡者がまいりました。あの、生きて出てきた者は一人としていない、土星の議事堂の件ですが・・・・」
「しっ!・・・奴にはそう言うなよ。さあ、早く連れて来い!」
ニヨロークとすれ違いに、小柄な男が音もなく入ってきた。クロフツはさりげなく彼についての書類を眺めた。なぜかこの職業には、大柄で太った人間はいない。目つきが鋭く、どこか繊細な挙動もこの職業ならでは。襟が長く突っ立った、黒い皮のつなぎを着ていた。そして他の追跡者に比べ、彼は何か超越的なものを感じさせる。
「きみは・・・・・・。戸籍番号936236136・・・」
「ミロです」
彼の声は冷たい。
「そうだったかね。えっと・・・」
クロフツは額の汗を拭く。
「フリーの追跡者?」
「そう」
クロフツは用件を思い出し、咳払いをして相手に笑いかける。
「どうだね。事件の概要はこの前送った通りだ。何か質問は?」
ミロは真顔でイスに座った。 
「公企業からの依頼は初めてだ」
「うむ。つい最近、この分野に進出したばかりだから、なにぶん人材不足でね・・・。時々、外部の専門家を非公式に呼んで、いろいろと頼んでいるんだよ。うむ。我々が造った物は、個人が無法で使っているような逃避的なものではない。まあ、長いこと使うと脳に障害が出るのは、これにも当てはまるけどね。我が社は、政府が行う惑星間会議のため議事堂を作っているのだ。そして我々は、これを福祉においても役立てるつもりだ。体が不自由な人でも、脳が機能する限り、いろいろ表現したり、自由に意見を述べることができるからね」
「・・・ああ。それで侵入した相手について、もう少し詳しく聞きたい」

 △

タイタンの存在者
1.雪が降りはじめた
2.土星の輪の中に
3.城を出て中心街を歩く
4.城を出て高速道路を
5.「神はいると思うか?」
6.君の話を聞かせてもらったが
7.フフフ・・・やっと連絡が取れたね
8.バイクは高速宙路を走る
9.私はどこへ行くのだろうか